メインコンテンツに移動
土木学会 原子力土木委員会 土木学会
原子力土木委員会

メインメニュー

  • 土木学会
  • 土木学会委員会サイト

メニュー

  • トップページ・新着情報
  • 原子力土木委員会規則・内規類
    • 原子力土木委員会規則
    • 原子力土木委員会運営内規
    • 成果報告書の作成等と標準化に関わる運営内規
  • 委員会名簿
  • 委員会活動状況
    • 委員会の活動経緯
    • 年次活動計画
    • 委員会資料
    • 公開講演会
    • 研究討論会
  • 委員会成果物
    • 成果物リスト
    • 外部発表リスト

小委員会活動

  • 規格情報小委員会
  • リスクコミュニケーション小委員会
  • 複合災害下での原子力防災における避難の課題と対応に関する研究小委員会
  • 第9期津波評価小委員会
  • 地中構造物の耐震性能照査高度化小委員会
  • 過去の小委員会(部会)一覧
    • 地盤安定性評価小委員会(活動期間:2018-2020)
    • 断層活動性評価の高度化小委員会(活動期間:2015-2020)
    • 国際規格研究小委員会(活動期間:2015-2020)
    • 地盤安定解析高度化小委員会(2015-2017)
    • 断層変位評価小委員会(活動期間:2013-2015)
    • 地盤安定性評価小委員会(2013-2014)
    • 構造健全性評価部会(2005-2012)
    • 地下環境部会(活動期間:1997-2006)
    • 耐震性能評価部会(1997-2005)

過去のお知らせ

  • 過去のお知らせ

リンク

  • 原子力土木委員会旧サイト

お問い合わせ

  • メールフォーム

現在地

ホーム

委員会からのお知らせ

公開講演会実施報告(2023/12/21)

公開講演会(2023年度第2回原子力土木委員会第1部) 実施報告

 

原子力土木委員会幹事団

 

1.講演会開催情報

 

  日時:2023年12月21日(木)13:00-14:30

  場所:オンライン開催(Zoomウェビナー)

  講師:武村 雅之 様(名古屋大学減災連携研究センター 特任教授)

  演題:「関東大震災から100年、真相から見える防災・減災へのヒント」

  概要:

 私は、30年間にわたり関東大震災について震災・復興の真相を明らかにすべく研究してきた。中でも、なぜ震源域から外れた東京が最大の被災地となったのかは最大の疑問であった。その真相を解き明かし、そこに隠された防災へのヒントを探る。また、その反省にたって帝都復興事業が行われ、首都としての品格を備え、防災上も完璧な街となったはずの東京が、なぜ今、首都直下地震の脅威に怯えなければならないのか、現代東京が抱える問題の根本原因とはなにか。それらの答えを探る中で防災への道が見えてきたように思う。昨今、防災意識の向上が叫ばれるが、市民の防災意識を向上させるためには、社会として根本的に変わらなければならないことがあるのではないか。関東大震災100年を機にみなさんと共に考えてみたい。

  参加申込者数:216名

 

2.講演会報告

 

 講演会冒頭で、原子力土木委員会中村委員長より開会の挨拶があり、続いて中島幹事長より武村氏の経歴が紹介された。

 武村氏から、市民の防災意識を高めるための街づくりをメインテーマに講演が行われた。関東大震災の被害について、特に震源域から外れた東京が最大の被災地となった要因について説明があった後、その反省に基づいて実施された震災後の帝都復興事業について説明があった。そして、帝都復興事業における街づくりの考え方に照らし、現在の東京の防災上の問題点について説明があった。

 関東大震災の被害については、東日本大震災の約10倍の被害であったこと、約10万5千人の死者の約7割が東京で発生しているが、その主な死因は火災であり避難者が持ち込んだ家財道具による延焼で被害が拡大したとの説明があった。

 帝都復興事業については、関東大震災の反省に基づき、181の寺院の移転による空間的ゆとりの確保や、将来の地下鉄整備を想定し余裕を持たせた主要道路の幅員設定等、世界的にみても稀な大規模の区画整理を実施したが、帝都復興事業が成功した要因について「公共性」「国民的合意」「帝都としての品格形成」の3つが挙げられるとの説明があった。

 現在の東京が抱える防災上の問題については、明治維新以降、防災を軽視し経済優先の街づくりを行った結果、木造住宅の密集やゼロメートル地帯形成、水辺の破壊、高層ビルの林立などにより再び地震に弱い街になってしまったこと、その結果、現在の東京には品格がなく、それを重んじる人もいなくなってしまったとの説明があった。最後に、防災意識を高めるには、市民が住みやすい街づくりを行うことや街を美しく品格を保つことが重要であり、それにより皆が街を守ろうという意識=防災意識が高まるとの説明があった。

 質疑応答の時間においては、以下のような質問があり、各質問への応答がなされた。

Q:東京の再生に向けてどのような手立てがあるか。
A:まずは学者も一般の方も含め、自分の考えをしっかり発言するべきである。発言しない社会風土に問題があると考えている。特に、学会では発言しやすい雰囲気作りに努めてほしい。

Q:2013年6月に国土強靭化基本法が施行された。その中で起きてはならない事象,つまり想定外事象が示され,多岐にわたり,幾つかの水準での対応が必要となるが、街づくりにおいて想定外への対応としてどこまで考慮すればよいか。
A:長期的にものを考えないといけない。例えば、いま世界的にエネルギー消費の抑制が求められている時代にリニア新幹線のような膨大な電気を使用するものが必要なのか。原子力発電所の防潮堤についても、ますます巨大化しているが、それらが老朽化したときの対応については考えているか。目先のことばかりでなく、将来のことも含めて考えるのが本当の防災対策だと思う。大変ではあるが、皆で考えていかなければ解決しない問題である。

 

 

 

委員会からのお知らせ
新着・お知らせ
  • 公開講演会実施報告(2023/12/21) についてもっと読む

公開講演会実施報告(2023/07/31)

公開講演会(2023年度第1回原子力土木委員会第1部) 実施報告

 

原子力土木委員会幹事団

 

1.講演会開催情報

 

  日時:2023年7月31日(月)13:00-14:30

  場所:オンライン開催(Zoomウェビナー)

  講師:窪田 茂 様(原子力発電環境整備機構 技術部 部長)

  演題:「地層処分に関する土木技術的な課題」

  概要:

 地層処分の概要として、対象廃棄物、地層処分の仕組み、安全確保の考え方などを紹介した上で、NUMOがセーフティケースとしてとりまとめた安全な地層処分の実現に向けた技術や、それを支える科学的知見を包括的に示した報告書(包括的技術報告書)のうち、工学的アプローチの概要を紹介する。そして、今後の課題の中でも土木技術的な話題として、事業で多く使用することが想定されるベントナイト材料の調達多様性の確保に向けた取り組み状況、坑道の耐震性評価手法を整備するための課題について紹介する。

 参加人数:276名

 

2.講演会報告

 

 講演会冒頭で、原子力土木委員会中村委員長より開会の挨拶があり、続いて中島幹事長より窪田氏の経歴が紹介された。

 窪田氏から、地層処分に関する土木技術的な課題をメインテーマに講演が行われた。地層処分の概要について説明の後、NUMOが2021年に公表した包括的技術報告書について、特に土木分野の設計アプローチと報告書作成過程で抽出された技術的課題について説明があった。そして、技術的課題に対するNUMOの取組について事例紹介を交えて説明があった。

 地層処分の概要については、我が国における地層処分の対象となる放射性廃棄物としてどのようなものがあるのか、またそれらの処分方法、高レベル放射性廃棄物及びTRU廃棄物の種類と特徴の説明があった。次に、地層処分の概念や地層処分システムによる隔離・閉じ込め機能の確保の考え方の説明があった。さらに、処分地選定プロセスについての説明、最後に、地層処分場の概要と地層処分のリスクと対策の考え方の説明があった。

 包括的技術報告書については、安全な地層処分を実現するための方法をセーフティケースとして取りまとめるとともに、技術的信頼性や実用性をさらに向上するための技術的課題について説明があった。次に、セーフティケースとはどういうものかとその役割についての説明があった。処分場の設計の目的とアプローチ、処分場に必要な要求事項、処分場の設計手順、包括技術報告書で示した工学技術分野に係る技術的課題について説明があった。

 技術的課題に対するNUMOの取組については、人工バリア代替材料の成立性と坑道の耐震性評価手法の整備について、事例紹介とともに説明があった。

 質疑応答の時間においては、以下のような質問があり、各質問への応答がなされた。

Q:科学的特性マップ県庁所在地市民との対話集会において、閉鎖までに70~80年かかり、閉鎖前に新しい知見が出たときにどうするのかとの質問と、原子力では技術が確立するとフィードバックする弾力性に乏しいとのコメントがあった。そこで、70~80年の間に新しい知見があれば、新知見に基づき、堀戻し対応すると回答し納得をいただいた。今日の資料ではフィードバックがなくなっていたように思うのだが、どのような扱いなのか教えていただきたい。
A:説明を省略したが、将来世代の選択肢を残すため、回収可能性の維持は明確な要件としてある。可逆性を担保することに加え、処分場を閉鎖するまで廃棄物の回収可能性を維持することは、国の基本方針に定められている。仮に新たな技術が進歩して、将来世代の方々が地層処分よりも新たな技術を選択する判断をするのであれば、埋設した廃棄体を回収するのが国の基本方針で定められている。

C:以前に、NUMOから耐震設計について不確かさを考慮せず、決定論的なシミュレーションの取り組み例についてコメントが求められた。本日の話では不確かさが考慮され進展していると思った。

Q:耐震設計において、地震動を対象として取り組んでいるようであるが、どちらかというと断層変位の方が重要なハザードだと認識するが、どのように考えているのか。
A:中越地震や熊本地震時、断層が動いた変状の影響でトンネルが被害を受けたということがあった。まずは揺れに対して取り組み、地殻変動についても検討したいと思っている。

Q:原子力学会において断層変位PRA実施基準が2020年に策定された。同実施基準の講習会にNUMO職員が参加し、積極的に質問していたと聞いた。同実施基準は、現在アップデートを始めるところなので、地層処分に係るニーズについて、原子力学会と連携して取り組むと合理的でないか。
A:頂いたご意見に感謝する。

Q:東北地方太平洋沖地震時の石油地下備蓄基地や類似施設の被害状況について確かめたか?
A:東北地方太平洋沖地震では地下構造物の被害事例がほとんどないと承知している。代表的な事例として岩手県久慈市に地下石油備蓄基地があり、津波によって地上施設は壊滅的な被害を被ったが、地下施設は問題なかったと聞いている。これまでの対話型全国説明会では、地下の揺れが地上に比べて小さいことに加え、地下の被害が少ないことの説明をする際の事例として活用している。

Q:最近、小型の核融合炉の開発が世界的に盛んに行われている。廃棄物も含め、安全・安心なものなのか。
A:新型炉についてあまり詳しくないが、新型炉から出てくる廃棄物を処分することに関し、基本的に地層処分するのであれば、隔離・閉じ込め機能が担保できる場所を選んでそれに対応できる設計をし、不確実性も含めていろいろな安全性を確認していくという流れに変わりはないと考える。

Q:説明内容にあった技術的課題について、おおよそいつ頃を目途に解明したいと思っているのか。
A:基本的に今の技術で、地層処分は実現可能だと考えている。処分場の閉鎖後長期の影響評価を行ううえでは不確実性の低減は重要であり、そのために現象理解の信頼性向上等に関する技術開発は継続して行う必要があると考えている。例えば、人工バリア代替材料に関する技術的課題として、オーバーパックの腐食に対する微生物影響が挙げられていることを紹介した。これに対しては、緩衝材に使用するベントナイトの密度を高めることで微生物によるオーバーパックの腐食を防止できる見通しがあるが、その論拠となるデータを拡充することで現象理解の信頼性向上に資するというものである。

Q:普通の土木構造物と異なり、タイムスパンが長い。重要なのは築き上げた技術の継承であるが、それについて考えがあればお聞かせ願いたい。
A:長い事業であるがゆえに人材育成・技術の継承は重要であると認識している。オールジャパンで取り組む地層処分研究開発では、NUMOと研究機関との共同研究を通じた技術移転を始めとして、様々なアプローチで技術継承する仕組みを整備していきたいと考えている。

Q:技術的課題がいつ頃までという話があったが、土木技術の中でどう設計し、どう確認するかが一番重要。工学技術を超長期で評価しようとすると不確実性が非常に高く、なんとなく保守的となる。時間軸を閉鎖、廃止、核種のピークで見るのか、時間軸を考慮した設計を行うことが非常に重要である。安全としての確保ができる到達点があり、そこを満たすのが設計だと思うが、到達点が中々示しきれていないので、永遠の課題が出てきて、いつになったら安全確保と言えるのかが見えない。そこを明確にすることで、今の技術で十分安全な処分場の設計であることを示すことができる。ただし、不確実性があるので、そこは精度向上という意味で課題があることにすれば、永遠の課題ではなく性能向上の位置づけなど明確に分けるべきだと思う。これが性能設計の基本だと思うがいかがか?
A:設計因子を基軸とした設計アプローチで性能設計の考え方を取り入れたつもりである。異なるサイトや事業段階においても、首尾一貫した設計を行うために処分場に求められる要求事項を満足するように設計をしなければならない。そのため、設計要件への適合性を判断するための指標と基準を設定したが、その根拠情報の拡充は今後も必要だと考えている。設計要件を満足するように設計した基本となる仕様に対し、閉鎖後や閉鎖前の影響要因を特定してその影響の評価を行い、基本となる仕様は妥当なものなのかどうかを確認することで、性能設計的な考えは取り入れている。

Q:資料中、必要に応じて設計の見直しとあったが、これがどういう基準なのか明示すると、達成できている部分とそうでない部分がはっきりする。設計と照査を繰り返して要求性能を満たすよう作るので、基準が見えるようにしていただくとありがたい。
A:閉鎖前安全を例にとると、深層防護の考え方に則って異常事象の発生防止策、拡大防止策を設計で検討するが、万一対策が機能しなかった場合を想定して影響緩和の観点から設計へのフィードバックは考えている。例えば、廃棄体の落下事象を考えた場合、発生防止策として把持の多重化、拡大防止策として高さ制限などは設計において考慮しているが、これらが機能しなかった場合に放射性物質の飛散に至るような評価結果になれば影響緩和の対策を設計に反映することになる。そのように検討をした事例は、セーフティケースレポートに含まれている。

 

 

 

写真1 ご講演いただく窪田茂様

 

委員会からのお知らせ
新着・お知らせ
  • 公開講演会実施報告(2023/07/31) についてもっと読む

公開講演会案内(窪田 茂様、2023/7/31)

日 時 : 2023年7月31日(月)13:00~14:30(質疑15分程度含む)

場 所 : オンライン開催(Zoom)

講 師 : 窪田 茂 様(原子力発電環境整備機構 技術部 部長​​)

演 題 : 「地層処分に関する土木技術的な課題」

 

講演要旨:

 地層処分の概要として、対象廃棄物、地層処分の仕組み、安全確保の考え方などを紹介した上で、NUMOがセーフティケースとして取りまとめた安全な地層処分の実現に向けた技術やそれを支える科学的知見を包括的に示した報告書(包括的技術報告書)のうち工学的アプローチの概要を紹介する。そして、今後の課題の中でも土木技術的な話題として、事業で多く使用することが想定されるベントナイト材料の調達多様性の確保に向けた取り組み状況、坑道の耐震性評価手法を整備するための課題について紹介する。

 

参加費 : 無料

参加申込: 参加をご希望される方は,以下のサイトからお申込みをお願いいたします。
         http://www.jsce.or.jp/event/active/information.asp

      【注意事項】 動画のスクリーンショット・録音・録画・二次利用等は禁止いたします。

参加申込締切日 :2023年7月25日  

 

土木学会継続教育(CPD)制度:

 土木学会継続教育(CPD)制度のプログラムです(1.5単位、JSCE23-0745)。受講証明書が必要な方は、事前参加申込をしていただき、講演会後にアンケート(受講して得られた学びや気付き(所見)を100文字以上記載)にご回答ください。事前参加申込およびアンケートの回答がない場合は、受講証明書は発行いたしません。

※他団体へCPD単位を登録する場合は その団体の登録のルールに則って行われます。単位を認定されるかは、直接その団体にお問合せください。

 

お問合せ: 土木学会事務局 研究事業課 丸畑
          E-mail: maruhata(at)jsce.or.jp (メールアドレスの(at)は@に変更しご利用ください)

委員会からのお知らせ
  • 公開講演会案内(窪田 茂様、2023/7/31) についてもっと読む

公開講演会実施報告(2023/01/27)

投稿者:吉井 匠 投稿日時:金, 2023-02-03 09:23

公開講演会(2022年度第3回原子力土木委員会第1部) 実施報告

 

原子力土木委員会幹事団

 

1.講演会開催情報

 

  日時:2023年1月27日(月)13:00-14:30

  場所:オンライン開催(Zoomウェビナー)

  講師:糸井 達哉 様(東京大学 大学院工学系研究科 建築学専攻 准教授)

  演題:「外的事象に関わるリスク評価技術の標準化に関する最近の取り組み」

  概要:

 2011年福島第一原子力発電所事故以降の日本原子力学会などにおける外的事象に関わるリスク評価技術の標準化に関係する取り組みなどを概観しながら、事故の教訓が日々の活動にどの程度反映ができているか、また、そもそも教訓として学べていないことは何かについて私見を述べる。

 参加人数:143名

 

2.講演会報告

 

 講演会冒頭で、原子力土木委員会 中村委員長より開会の挨拶があり、続いて岡田幹事長より糸井氏の経歴が紹介された。

 糸井氏の講演では、①2012年以降のリスク評価技術の標準化などに関わる活動、②原子力安全の議論の場の創成の試み、といったテーマに関する講演が行われた。

 まず、前提として、福島第一原子力発電所事故の教訓は学協会を含む研究開発・高等教育の諸活動に根付いたのか、という問題意識が述べられた。

 ①においては、この問題意識のもと、2011年以降の福島第一原子力発電所事故の教訓の反映,リスク評価技術などの標準化に関わる活動と②で述べられる関連する大学での活動の紹介を通して、事故の教訓が日々の活動にどの程度反映ができているか、また、そもそも教訓として学べていないことは何かについて、多岐にわたる資料に基づき説明された。

 ②においては、東北地方太平洋沖地震を踏まえた東京大学の取り組み、福島第一原子力発電所事故を踏まえた東京大学における原子力安全に係る教育、これまでに東京大学で講演いただいた方々(2021年以降)の紹介、リスクマネジメントにおけるリスクとコストの比較(安全文化)、人材育成に関わる課題、原子力安全規制の本質、原子力安全のマネジメントの課題、地震ハザード評価の不確かさへの対応で重要なこと、標準化において重要なこと、地震リスク評価の本質、人材育成に必要と考えられる要素、等について説明された。

 質疑応答の時間においては、以下のような質問があり、各質問への応答がなされた。

Q:示方書の改定の審議においてもよく議論されることではあるが、リスク評価と設計とは別もののように捉えられることもある中、本質的には両者の検討プロセスの中で、同じようなことが実施されているようにも考えられるがいかがか?
A:その通りである。本来は、耐震設計の中でも同じようなことは行われなければならないが、現状ではそれぞれの専門分野における個別の検討が中心になっている場合が多いのではないか。本質的には、地震PRAも耐震設計もその目的は同じであって、将来的にどのように耐震設計に地震PRA的な視点を入れていくか(同時に地震PRAに耐震設計の視点をより取り入れていくか)、これらは対立する概念ではなくて、将来的には統合されていくべきものと考える。現状の耐震設計で足りない部分というのは、重要度に応じて安全余裕をどのようにつくり込んでいくか、それにより、極めて重大な事故をどう防ぐか、というところまで含めて充実させていくこと、そういうところがPRA的な考え方に基づいて行われていくのであれば、どちらの方が大事なのかという議論は不要になる。

Q:これからPRAを設計の実務に実装していく時に何が課題になるか?
A:本来は設計者がPRA的なこともできて、PRA技術者がディテールをサポートするという形でも良いが、分野として違う人が独立に評価すれば良いわけではなく、それらの専門家のインテグレーション、インタラクションを考慮して設計していくところが実務に実装していく時に課題になる。

Q:地震PRAは不確実さが大きいから使えないという意見がよく出される。一方、本日の講演を踏まえれば、地震リスクは不確実さが大きいことは事実であるから、不確実さが大きいから使えないと言っている人は公衆に対して正直でないと解釈して良いか?
A:PRAは確率の値を見てOK、NGを判定するだけのものと解釈される場合は、地震PRAは不確実さが大きいから使えないという反論で十分となる。一方で、PRAはもう少し違う形でとらえて、まず事故の分析をきちんとしている、その中でどういう設備が重要だということをきちんと評価している、そういうことをきちんと最終的な判断に使うという形でPRAを活用し、説明をする人に対して、不確かさが大きいから使えないという反論はナンセンスと考える。不確実さが大きいから使えないといわれる場合には、加えて、PRAを使う側に問題となる理由があるケースがある。PRAを行ったときに、前提条件の設定によって結果が異なる場合もありうるが、そのような検討を裏で評価をしているだけで、表に出さない(PRAの不確実さに含めない、または、前提条件として明示しない)で、良い結果だけを出しているとか、そういうようなことがあれば、そういう結果を見たら、その反論として不確かさが大きいから使えないと差し戻すというのはあり得るかもしれない。

Q:伊方SSHACが成功裏に終了して以降、まだ他のサイトへ展開されていない。多分、理由は、一連の検討を実施するのに時間がかかる、費用もかかるといったこと。そういうサイトでは、伊方SSHACをベースに使って、水平展開を行うようにすれば時間も費用も合理化できると考える。そういう展開をしていくためのガイドをすぐにでも出すべきと考えるがいかがか?
A:進みは遅いが、共通認識ができて来ている。多くの人に理解頂かないとSSHACは実現しないので、遅いと言うこともできるが、周りからそう言って頂きつつ、粛々と水平展開を行うという進め方が良いであろうと考えている。

Q:最近、SSHACを表面的にとらえた論文が多く見られる。査読論文でも表面的に扱われ、例えば判断の幅が対数正規分布とされたりして、SSHACの真髄に当たるところが誤解されている状況が目に付く。このような現状についてどう考えるか?
A:論文や報告書などで、専門家にアンケートを取って、それをロジックツリーにならべるだけで認識論的不確実さの評価になるというような記載も散見される。アンケートは「意見」でしかなく、SSHACの考え方(Technically defensible interpretations [技術的に抗弁できる判断])とは全く相いれない。ロジックツリーをつくるということはどういうことなのか、なぜつくるのか、ということを筆者が理解できているかどうか、筆者が認識論的不確かさの評価と言っていても、それが本質的にSSHACの考え方に基づくものであるのか読者側が気をつけなければならない。判断の幅が対数正規分布になることはありえない。判断には上限と下限があるので、認識論的不確実さを対数正規分布とするのは、近似としては正しい場合もあるかもしれないが、一般には正しいとは言えない。
 

 

委員会からのお知らせ
  • 公開講演会実施報告(2023/01/27) についてもっと読む

公開講演会案内(糸井 達哉様、2023/1/27)

投稿者:吉井 匠 投稿日時:火, 2023-01-10 03:44

日 時 : 2023年1月27日(金)13:00~14:30(質疑15分程度含む)

場 所 : オンライン開催(Zoom)

講 師 : 糸井 達哉 様(東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 准教授​​)

演 題 : 「外的事象に関わるリスク評価技術の標準化に関する最近の取り組み」

講演要旨:

 2011年の福島第一原子力発電所事故以降の日本原子力学会などにおける外的事象に関わるリスク評価技術の標準化に関係する取り組みなどを概観しながら、事故の教訓が日々の活動にどの程度反映ができているか、また、そもそも教訓として学べていないことは何かについて私見を述べる。

参加費 : 無料

参加申込: 参加をご希望される方は,以下のサイトからお申込みをお願いいたします。
         http://www.jsce.or.jp/event/active/information.asp

      【注意事項】 動画のスクリーンショット・録音・録画・二次利用等は禁止いたします。

参加申込締切日 :2023年1月25日  

 

土木学会継続教育(CPD)制度:

 土木学会継続教育(CPD)制度のプログラムです(1.4単位、JSCE23-0023)。受講証明書が必要な方は、事前参加申込をしていただき、講演会後にアンケート(受講して得られた学びや気付き(所見)を100文字以上記載)にご回答ください。事前参加申込およびアンケートの回答がない場合は、受講証明書は発行いたしません。

※他団体へCPD単位を登録する場合は その団体の登録のルールに則って行われます。単位を認定されるかは、直接その団体にお問合せください。

 

お問合せ: 土木学会事務局 研究事業課 丸畑
          E-mail: maruhata(at)jsce.or.jp (メールアドレスの(at)は@に変更しご利用ください)

委員会からのお知らせ
新着・お知らせ
  • 公開講演会案内(糸井 達哉様、2023/1/27) についてもっと読む

ページ

  • « 先頭
  • ‹ 前
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • …
  • 次 ›
  • 最終 »
RSS - 委員会からのお知らせ を購読

(c)Japan Society of Civil Engineers