American Society of Civil Engineers(ASCE)の年次大会が10月18日から21日イリノイ州シカゴ市にて開催された。今回は駆け足での参加になったが、COVID-19禍後のASCEの大会、そして近代建築の宝庫と言われるシカゴの新旧の建物が混在する街の空気を少し吸い込むことできた。
大会会場には海外の参加者を含めて昨年より多くの参加者が集まり、その中でマスクを着用する姿はほとんど見られず、アルコール消毒の喚起もなかった。セッションは全て講演者と聴講者が対面して意見交換する形がとられ、従来の大会に参加している感覚を持った。そして、大会場で行われたASCE会長のスピーチ、授賞式、プレナリーセッションは、講演者が壇上を自由に歩きながら生き生きと話し、それを聞く聴講者は、頷き、笑い、質問を投げかけて講演者に反応していた。その様子は、聴講者が講演者の発するメッセージを立体的な経験として受け取り消化し、そこにまた講演者が返す、という対話の空間がつくられる過程を感じさせた。
この大会はASCEのデジタル化推進の姿勢を改め感じるものでもあった。例えば、これまでは会場内に“Book Shop”がオープンされ、売る側が本を並べながら立ち寄る参加者と言葉を交わし、立ち寄る側が本を手に取りページをめくる姿があった。今回設置された“Book Shop”は、無人のテーブルの上に複数のパンフレットが置かれているばかりで、本は一冊も見当たらなかった。その隣では、参加者がVRゴーグルを着けてASCEの将来ビジョンを描く動画“Cities of the Future”を体験していた。後で聞いたところ、ASCEは、デジタル化の流れに沿って、今後、出版物を全てe-bookに切り替えていくそうである。
と、デジタル化の波に押され気味の会場から外に出て、目の前に流れるシカゴ川を渡ってミシガン湖へと歩く。そして、公園を横切ると、その横には超高層ビルや近代的な外観と風格ある外観を持つ大学が並び、向かいにはルネッサンス様式のシカゴ美術館やコンサートホールが立っていた。
新旧を感じるASCEの大会とシカゴの街であった。ただし、湖から吹いてくる風で一気に体が冷えるのは不変だろうか?