インフラ整備および管理の重要性から、米国や英国では各国の土木学会による社会インフラ全般の現状評価が行われ、その結果は社会で広く認知されています。
土木学会は、第三者機関として日本のインフラの健全状況の評価を行うこととし、2016年度に「インフラ健康診断書 道路部門試行版」を公表いたしました。2016年度の健康診断書は、試行版とし他のインフラに先行して点検・診断が制度化された橋梁やトンネルを含む道路部門を対象としました。
この度、新たに河川部門、下水道部門と、2016年度に引き続き道路部門の評価を行い、「2017インフラ健康診断書(試行版)」を公表いたしました。なお、今回も、全国の施設での点検結果が全てそろってない状況であることから試行版としています。
各部門の健康診断結果概要
健康診断は、施設の点検結果や維持管理体制の情報を公表データや調査により収集し、土木学会独自に指標化することで、施設の健康度や維持管理体制に対して行っています。各部門の具体的な健康診断結果は、部門別の健康診断書でご覧ください。なお、各部門や各部門内の施設に求められる機能や評価項目・基準、平均的 な利用年数などが異なりますので、総合的な健康状態を直接比較できないことにご注意下さい。また、インフ ラは生活や経済活動を支える、あるいは災害への対処をするために必要な量や質の整備が求められますが、本健康診断書では、整備水準は対象とせず、機能を発揮できるための健康状況のみを対象としています。
河川部門(堤防、河川構造物、ダム本体)
堤防、河川構造物(水門、樋門・樋管)の健康状態は楽観できる状態ではありません。ダム本体の健康状態は、全体的に良好に保たれていますが、機械設備等の経年劣化が懸念されるため、確実に点検・評価を 実施し、状態を把握することが重要です。国民の安 全・安心を確保するため、河川管理施設の維持管理に係る予算、人員の充実が必要です。特に都道府県が管理する施設については、点検・評価、補修を継続的に行える体制 を築き上げていくことが必要です。
詳細は、http://committees.jsce.or.jp/reportcard/node/10
下水道部門(管路)
管路施設の現在の健康状態は、古くから下水道が整備された中規模以上の都市を中心に懸念すべき状況にありますが、一方で最近下水道が導入された小規模な都市では今のところそのような状況にはありません。健康状態が懸念される大都市を中心に管路の点検や修繕などさまざまな対策が進められていますが、一方で管路施設の増加や職員数の削減により、単位延長あたりの正規職員数は大幅に減少しており、今後施設の老朽化が進む中で十分な維持管理体制を継続できるかについては、中小都市を中心に憂慮すべき状況にあります。
詳細は、http://committees.jsce.or.jp/reportcard/node/11
道路部門(橋梁、トンネル)
全国の橋梁の健康状態は、少なくない数の橋梁で劣化が進行し、早めの補修が必要な状況です。また、市区町村管理の橋梁ほど劣化が顕在化している状況となっています。全国のトンネルの健康状態は、多くのトンネルで劣化が顕在化し、補修・補強などが必要な状況となっています。橋梁・トンネルとも、今後も経年劣化による老朽化が進行することが予想されます。早めの補修を行っていき、劣化の進行を抑える必要があります。
管理体制については、維持管理を適切に行う体制が整えられつつありますが、点検実施者の数的確保や技術力向上など、人材育成が急がれる状況となっています。
添付 | サイズ |
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「2017インフラ健康診断書(試行版)」 全体概要版 | 1.02 MB |