土木学会(会長:谷口 博昭)は、6月6日(月)に、2021年度会長特別委員会 コロナ後の“土木”のビッグピクチャー特別委員会による提言書『Beyondコロナの日本創生と土木のビッグピクチャー~人々のWell-beingと持続可能な社会に向けて~ 』 を公表いたしました。
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提言書「はじめに」より
大きな変化と国難ともいえる危機に多くの国民が協調して立ち向かうためには「コロナ後の日本創生と土木のビッグピクチャー」を示し、共有することが重要なポイントと考えています。そのビッグピクチャーでは、現状の種々の制約に縛られず、未来志向で、従来からの価値観の転換を図り、時代の変化に適応することが求められます。
例えば、
① これまでの「経済効率性を重視した社会」でなく「持続可能で、誰もが、どこでも、安心して、快適に暮らし続けることができるWell-Being社会」を目指すこと
② 近い将来生起する可能性の高い巨大地震やパンデミックとなったコロナ禍を通じて顕在化した巨大都市の脆弱性のリスクを軽減するための分散・共生型の国土の形成と国土強靭化の加速
③ 経済安全保障を確保しながら持続可能な地方を創生する、農林水産業の再評価や再生エネルギーの活用、保健医療体制や教育体制の確立などに対する支援強化と、交流連携を促進し地方が特色を活かして自立的に発展していくことに資する交通と情報のネットワーク強化と整備の加速
といったことが挙げられます。
インフラストラクチャー(以下、インフラと記す)は生活経済社会の下部構造、基盤であり、生活経済社会の変化に応じて高度化・進化していくことが欠かせません。またインフラを実空間で構築するためには長い時間を要することから、事前的・先行的に計画的・効率的な整備・保全を図ることが極めて重要になります。
一方で、デジタルトランスフォーメーションやカーボンニュートラルの推進とともにインフラはその機能の再定義が求められています。量から質へ、モノからコト・サービスへ、点から線・面へ、単独から連携強化へ、他分野との連携を強化しながら、国民の基本的権利としての観点や質的評価が求められます。
未来志向に立てば、インフラ整備に概成はありません。将来世代のための礎を築くことにゴールはなく、常に道半ばです。インフラは生活経済社会の下部構造、基盤であり、今後も生産性向上を目指していくためにも、未来志向で経済社会再構築のための積極的なインフラ投資を進める欧米諸国のように、我が国でも生活経済社会の再構築のための積極的なインフラ投資が求められます。
現状の社会資本整備投資では、「防災・減災、国土強靭化」「維持管理・更新」にそれぞれ約3割の予算が充てられ、未来に対する先行投資、次世代が躍動する基盤を築くための「成長基盤整備」は約4割です。暮らしの安全確保と現状の水準を維持しつつ、未来へ負の遺産とならないように、成長基盤への投資を確保することも求められます。
そしてビッグピクチャーを実現する制度として、長期計画の制度化、事業の意思決定手法の見直し、公的負担のあり方や、共生促進に向けた国民参加を提案しました。土木学会8支部での学生など若者を交えての議論の中で提案された宇宙、空から海底、地下までの未来に対する提案を活かせるように、さらに議論をおこない、検討を深めるとともに、国民の皆様のインフラへの理解向上を図りつつ、持続可能な社会の礎を築く土木技術者の使命を果たしていきたいと考えます。
→ 提言書全文(PDF:14MB)
土木学会公式noteでも、本文(コラム、支部成果を除く)をお読みいただけます。