日 時 : 2019年1月30日(水)13:30~15:00
場 所 : 土木学会 講堂
講演者 : 丹保 憲仁先生 (北海道大学 名誉教授、土木学会 第89代会長)
講演題目: 「近代の終わる時 ~明日はどうなるのだろう~」
講演要旨:
日本近代150年の歩みを止める時が来たようです。次々と新しい活動を加えてきた150年は、古いものからの脱却であり、成功の歴史でもありました。歴史には光と影がありますが、光がほとんど陰になるとはほとんどの近代人は想像もしてきませんでした。舞台の根本が変わることを、150年の歴史が今見せようとしていることに気づく必要があります。
鉱物エネルギーの一過型・集中利用で、近代文明は人類を1800年代の10億人から2010年代の70億人にまでに大膨張させました。今日の再生可能な自然エネルギー利用は僅か10%以下で、このままでは、鉱物エネルギーの尽きた後、文明は1800年の昔に後戻りしてしまいます。鉱物エネルギーの有効寿命はこれからの高々50-75年くらいに過ぎません。エネルギーを賢く使い、集住システム・食糧生産・水・交通・安全保障システムと生活モードを根本的に省エネルギー型に転換し、風力、水力、地熱、太陽光・熱等の再生可能エネルギーを基盤とするシステムを半世紀かけて量的に現状の35~40%ぐらいまで獲得できれば、22世紀以降まで人類は頑張れるかもしれません。
それでも現状に比して30~25%の基本エネルギーが足りません。世界人口の大幅な抑制・積極的減少までを考えて、自然の循環を大切に、閉じた物質循環・代謝を根本にまでさかのぼった省エネルギーで営む地域分散自立型社会を考えます。その上で、情報は世界に開く広域ネットワークを持つという、人類がかつて持ったことのない、「開いた情報と閉じた自立型物質代謝」を持つ新しい地球文明を次の時代『後近代』の人々のために準備したいものです。
日本の近代150年は、科学技術基盤の、足し算を果てしなく続け、高エネルギー、大量資源消費の可能限界まで働かせた西欧近代型の成長の時代でした。もう破綻なしに、2050年以降このような近代成長社会は持続できません。2050~2100年の半世紀をかけてどのようにして、資源・エネルギー大量消費の近代を脱して、22世紀以後の安定した後(脱)近代社会を構築するかが問われています。2050~2100 Issues です。
過剰成長した東京を頭とする太平洋沿岸メガロポリスの解体・再編と北海道・東北・関東・中京・関西・中国・九州・沖縄等の核メトロポリス(札幌・仙台・広島・などなど)をネットワークの基盤として、周辺の中少都市・都市型集村をつなぐ都市型連携社会からなる自律的広域圏の確立による、世界システムへの直接的参画(エキュメノポリス)が望まれます。東京一極集中の近代日本から、核メトロポリスと近隣都市・集村からなる自律的地方域圏が情報系で世界に直接結ぶネットワーク社会(エキュメノポリス)の構築です。By way of Tokyo の卒業です。
参加費 : 無料
参加申込: 参加をご希望される方は,以下のサイトからお申込みをお願いいたします。
http://www.jsce.or.jp/event/active/information.asp
お問合せ: 土木学会事務局 研究事業課 丸畑
E-mail: maruhata@jsce.or.jp/Tel:03-3355-3559