公益社団法人土木学会(会長 佐々木葉)では、2020年1月、2021年4月に流域治水に関する提言・声明を発出しました。
その後流域治水施策推進のための具体策を明確にするため、2022年4月に「土木学会豪雨災害対策総合検討委員会フォローアップWG」(委員長 塚原健一)を立ち上げました。
本WGでは調査団を結成して、最上川および荒川、手取川および梯川、秋田県秋田市、茨城県日立市の被災現場を調査、土砂災害および内水氾濫から大河川の氾濫まで様々な流域の治水対策のあり方について二年間議論を重ねてきました。
そして以下の二点が今後の流域治水施策の推進に重要であるとの認識に至りました。
一つ目は、本川、支川、用排水路、下水道、氾濫水および地下水の相互作用を考慮した一体解析により、流域全体における水収支を「見える化」することが、住民にリスクと治水効果をわかりやすく示すとともに、今後の施策を検討する上で有効だということです。
そのために、流域全体で、降雨量、土中への浸透量、貯留量、河道への流出量、河道貯留量、河道流下量および氾濫量を捉え、各水量が時系列でどのように変化するのかを示した「流域水収支図」の活用を提案しています。
また、流下能力のボトルネックを明示し、治水施策完了時までの各整備段階において、どの程度の規模、発生頻度の降雨で、どの領域から、どの程度浸水するのかがわかる「多段階リスク明示型浸水想定図」をこの「流域水収支図」とリンクさせることについても提案しております。
二つ目は、治水だけでなく、利水、自然環境、親水、文化、および経済活動も踏まえた流域の目標像を考えるには、国・都道府県・市区町村、多分野の研究者、民間企業、地域住民による連携が必要だということです。
その上で、具体的な連携の例をいくつか提案しています。